2016年11月 1日 (火)

れなかったにしては

「そのニュースはまだ熊神教の耳にはいっていないんだ」バラクはそっけなく言った。「なんと言ってもかれこれ三千年にしかならない。とにかく、それが熊神教の背後にあるいささかくたびれた考えなんだ。まずアロリアを再統合すること、それが連中の第一目的だ。次が、西方の諸王国を侵略して征服することだ。それからはじめてマーゴ人とマロリー人を攻略することを考えはじめるだろう」
「熊神教の人々はちょっと遅れているんでしょう?」ダーニクがたずねた。
「一部の連中はまだ火すら発見していないよ」バラクはこばかにしたように言った。
「アンヘグがどうしてそんなに心配しているのかよくわからんな、バラク」ベルガラスが言った。「熊神教は都市周辺でじっさいにはなんの問題も起こしておらん。真夏の宵にかがり火のまわりをとびはねたり、真冬に熊の毛皮をはおって一列になってすり足で歩き回ったり、いがらっぽいほらあなの中で煙にまかれて立てなくなるまで長い祈りを唱えたりするだけだ。そのどこが危険なんだ?」
「いま、説明しますって」バラクはひげをひっぱった。「これまではずっと、田舎の熊神教はまとまりのない愚行と迷信の集団でしかなかったんです。だが、この一、二年のうちに、新しいなにかが進行しているんですよ」
「ほう?」ベルガラスは興味深げにかれを見つめた。
「新しい指導者が出現したんですよ――何者なのか、おれたちはつかんでもいませんがね。昔は、ひとつの村の熊神教の信者たちは別の村の信者たちを頭から信用しなかったもんです。だから組織化されて問題を起こすこともなかった。この新しい指導者はそれをすっかり変えてしまったんですよ。歴史上はじめて、田舎の熊神教の信者たちがひとりの人間から命令を受けはじめているんです」
 ベルガラスは眉をひそめた。「たしかに問題だな」
 ガリオンがとまどいぎみに言った。「じつに興味のある話だけど、バラク、どうしてアンヘグ王はわざわざあんたを送りこんでまでぼくに警告するのかな? ぼくの知るかぎりでは、熊神教は〈風の島〉にこれまではいってきたことさえないんだよ」
「アンヘグは用心のためにそうしたかったんだ、というのは、この新しい信仰の敵意がおもにきみにむけられているからだ」
「ぼくに? どういうわけで?」
「きみはトルネドラ人と結婚した」バラクは言った。「熊神教の信者にとっては、トルネドラ人はマーゴ人より悪いんだ」
「めずらしい意見ですのね」セ?ネドラが巻毛をふりたてて言った。
「それが連中の考えかたなんだよ」バラクはセ?ネドラに言った。「あのまぬけたちのほとんどは、アンガラク人がなんなのかも知らない。だがトルネドラ人ならいやというほど見てきた――たいがいは抜け目のない商人たちをね。千年のあいだ、かれらは王があらわれて〈リヴァの剣〉をとり、自分たちを聖域へみちびいて西方の諸王国を征服することを待ち望んでいたんだ。ところが、いざ王があらわれてみると、かれがまっさきにしたのはトルネドラ皇室の皇女との結婚だった。かれらの見方では、次代のリヴァの王は混血児になる。かれらはあなたを毒のように憎んでいるんだよ、かわいいお妃さま」
「なんてばからしい考えなの!」セ?ネドラは叫んだ。
「もちろんだ」大きなチェレク人は同意した。「しかし宗教に支配された精神の特徴というのは、つねにばかげているんだよ。ベラーが口をつぐんでいてくれたらよかったのにな」
 ベルガラスが突然笑いだした。
「なにがそんなにおかしいんです?」バラクはきいた。
「ベラーに口をつぐんでいてくれと頼むことぐらい、むだなことはないだろうと思ってな」老魔術師はまだ笑いながら言った。「おぼえているが、あるときなんぞ、ベラーは一週間ぶっとおしでしゃべりまくったもんだ」
「なにをしゃべっていたんだろう?」ガリオンは好奇心から言った。
「初期のアローン人たちにむかって、冬のはじめに北への移住を開始するのは賢明な考えではないと説明していたんだ。当時はひとつのことを完全に理解させるにはアローン人に話すしかなかったのさ」
「それはいまもそれほど変わっていませんわ」セ?ネドラが皮肉っぽく夫をながめてから、笑い声をたてていとおしげにガリオンの手をさわった。
 翌朝は雲ひとつない夜明けとなった。エランドはいつものように目がさめるとすぐ、きょうがどんな一日になるかを見に窓に近づいた。リヴァの都市をみわたし、まばゆい朝日が〈風の海〉を照らしているのを見て、にっこりした。雲の気配はどこにもない。きょうはいい天気になるぞ。ポルガラが出しておいてくれたチュニックとズボンをつけて、エランドは家族のところへ行った。ダーニクとポルガラはそれぞれ暖炉の左右に置かれた、革張りのすわりごこちのいい二脚の椅子にすわって、静かに話しながらお茶をのんでいた。エランドはいつものようにポルガラのところへ行って首に両腕をまわし、キスをした。
「寝ぼうね」ポルガラはエランドの目の上にかかっていた巻毛をはらいのけて、言った。
「ちょっと疲れたんです」かれは答えた。「あまり寝てなかったので」
「そうらしいわね」ほとんどうわの空で、ポルガラはエランドを膝へだきあげ、やわらかな青いビロードの化粧着にひきよせた。
「膝に抱くにはちょっと大きいんじゃないのかね」ダーニクが好ましげな微笑をふたりにむけながら言った。
「わかってるわ。だからできるだけしょっちゅう抱いているのよ。大きくなるのはあっというまですもの、できるあいだにこうしておかなくちゃ。子供にとって育つのは大切なことだけれど、小さな子がそばにいるすばらしさが消えていってしまうのが惜しいのよ」
 ドアに短いノックがあって、ベルガラスがはいってきた。
「あら、おはよう、おとうさん」ポルガラが挨拶した。
 ベルガラスはそっけなくうなずいた。「ポル、ダーニク」
「ゆうべはちゃんとバラクをベッドへはこべましたか?」ダーニクがにやにやしながらたずねた。
「真夜中ごろ、寝かせたよ。ブランドの息子たちがてつだってくれたんだ。バラクは年々重くなるようだな」
「ガリオンの酒樽のそばを一晩中はな、びっくりするほど具合いがよさそうね、おとうさん」
「わしはそれほどのまなかったんだ」ベルガラスは暖炉に近よって両手を火にかざした。
 ポルガラは片方の眉をつりあげて父親をながめた。
「いろいろ思うことがあってな」ベルガラスはそう言ったあと、まっすぐにポルガラを見すえた。「ガリオンとセ?ネドラのあいだは万事もとどおりになったのか?」
「ええ、そのはずよ」

2016年9月 9日 (金)

そなただのがなければ

「それぐらいあれば何とかなるな」アンヘグはバラクの方を向いた。「あしたから船の陸送にかかるとグレルディクに伝えてくれ。それまでに水夫たちの酔いをさませておけとな」
 セ?ネドラは、翌朝、河岸に行ってチェレク人たちが汗水たらしながら、川から船を引きあげ、丸太を並べた道を上を人手SCOTT 咖啡機開箱だけでひいているのを見て、〝陸送?という言葉の本当の意味をはじめて知った。船を数インチ動かすだけでもどんなに大変か、彼女はすっかり驚いてしまった。
 驚いたのは王女だけではなかった。鍛冶屋のダーニクは船と人間の行進をひと目みるなり、驚いてアンヘグ王を探しにいった。「おそれながら、陛下」かれは恭しく声をかけた。「あのような輸送方法は人間だけでなく、艇にとっても悪い影響を及ぼすのではないですか」
「船だ」アンヘグはただした。「あれは船と呼ぶのだ。艇とは違う」
「どう呼ぼうとかまいませんが、あれではつなぎ目がゆるんでしまいませんか」
 アンヘグは肩をすくめた。「どうやったって、多少の漏れは仕方がないのさ。それにわれわれは長年この方法をとってきたのだ」
 ダーニクはこれ以上チェレク王と話しても、らちがあかないことを知った。そこでかれはバラクを探した。バラクはむっつり考えこむような顔をして、川を上ってくるかれの巨大な船を眺めていた。「水の上に浮かんでいるさまはなかなか壮観だが」と赤い髭をたくわえた男は、友人のグレルディク船長に話しかけていた。「陸にあげて運ばなければ優思明ならないかと思うと、そうも言ってられんな」
「だが一番大きな戦艦がほしいと言ったのは、おまえさんだからな」グレルディクはにやりと笑ってみせた。「水夫たちがあの巨体を運ぶ気を起こすまで、さぞかしたくさんのエールをおごってやらねばならんだろうな。陸送にあたっては船長も参加するしきたりは別としても」
「馬鹿げた習慣だ」バラクがうなるように言った。
「どうやら今週はついておらんようだな、バラク」グレルディクの笑みがますます大きくなった。
 ダーニクはこの二人の海の男を相手に、小枝で土手の砂地の上に図案をかいて、熱心に説明をはじめた。話が進むにつれて、二人はいっそう熱心に耳を傾けているようすだった。
 三人が話しあってから、まる一日後、二十数個の車輪をつけた、車体の低い船架がふたつ用意された。他のチェレク人が馬鹿にしたようすで眺めるなかを、二隻の船は川から船架の上に慎重に載せられ、紐でしっかり固定された。両船の水夫たちが平原に向かって船架を引きはじめると、馬鹿にしきった笑いはしだいに消えていった。馬上からそのようすを見ていたヘターは、少し考えこんだ後、か優思明らにたずねた。「何で人手に頼るのですか。ここには世界でもっとも多くの馬が集められているというのに」
 バラクは大きく目を見開き、神の啓示を受けたようなほほ笑みを浮かべた。
 バラクとグレルディクの船が、車輪のついた船架に載せられたときに発せられた嘲りの笑いは、アルガー産の馬に引かせたそれが、全力をふりしぼって数インチずつ船を引きずっていく人間たちを尻目にすいすい崖地に近づいていくのを見たとたん、怒りを含んだ不満の声に変わった。バラクとグレルディクはさらに効果を高めるために、かれらの水夫に甲板の上でエールを飲んだり、サイコロをふるったりして、存分にくつろいでよいと命令した。
 アンヘグ王は馬に引かせた巨大な船に乗ったいとこが、これみよがしに笑いかけながら通り過ぎていくのを、冷たい目で眺めていた。王の表情には心底からの怒りが浮かんでいた。「いくら何でもこれはやりすぎだ!」かれはかんしゃくを起こして、王冠をつかみ、地面に投げ捨てた。
 ローダー王は落着きはらった顔で言った。「わたしにはこれまでの人力で運ぶ方法がそれほどよいとは思えなくなってきたよ。汗水たらしてうんうん言うことに、何らかの深遠な理由があるにせよ、何といってもこちらの方が早い。それにわれわれは一刻も早く作業を終わらせたいのだ」
「だが不自然だ」すでに数百ヤードほど先に行ってしまった二隻の船に、怒りの視線を向けたまま、アンヘグはうなり声をあげた。
 ローダーは肩をすくめてみせた。「何だって最初は不自然なものさ」
「考えておくことにしよう」アンヘグはむっつりした声で言った。
「だが、あまり考えこまない方がよさそうだぞ。一マイル進むごとにきみの君主としての名声は下がっていくばかりだろう。バラクのことだから、崖地にたどりつくまで、きみの水夫たちにあの工夫を見せびらかしかねん」
「まさかそこまでは、せんだろう」
「さあ、どうかね」
 アンヘグ王は苦々しげにため息をついた。「あの鼻持ちならぬ利口ものの鍛冶屋を呼んでこい」かれは部下に命じた。「さっそく検討を始めよう」
 その日の遅く、連合軍の各指導者たちが戦略会議のために主天幕に集まった。「われわれにとって当面の大きな問題は、いかにしてこの軍勢の規模を知られずに行くかということだ」ローダー王が出席者一同にむかって言った。「一度にこの大人数を崖まで進軍させて、崖下に集結させるよりも、小集団ずつで出発して、到着した順に一気に崖上の砦まで行かせる方が良いと思われる」
「そのように行軍を分散させたのでは、進む速度が遅くなりはしませんか」コロダリン王がたずねた。
「それほどのことはないだろう」ローダーは答えた。「まず、きみの騎士団やチョ?ハグ王の諸氏族から先に上げて、あらかじめ町や田畑を焼きはらってもらう。そうすれば、後から多くの歩兵が上がってきても、タール人はそれどころではないから、連中に人数を気どられる心配はない」
「余分にかがり火をたけば、大勢の人数がいるように見えますよ」レルドリンがほがらかな声で言った。
「軍勢をいかに少なく見せるかが、われわれの日的であって、多く見せることではないのだよ」ブランドが深い声で穏やかにさとした。「タウル?ウルガスやザカーズに警戒心を抱かせて、かれらの軍隊を出動させるようなことはしたくない。ゲゼール王が率いるタール軍だけを相手にする分には楽だろうが、マーゴ軍やマロリー軍が介人してきたのでは、大変な戦いになってしまう」
「われわれとしてもそれだけは、絶対に避けたいのだ」ローダー王がつけ足した。
 レルドリンはいささか恥じ入ったようすだった。「そんなことは考えてもみませんでした」かれの頬をゆっくりと血がのぼっていった。
「レルドリン」セ?ネドラは気まずい思いをしている若者を助けるために声をかけた。「ちょっと、兵士たちのようすを見てまわりたいの。一緒につきあって下さるでしょう?」
「もちろんですとも、王女さま」若いアストゥリア人はすぐに立ちあがった。
「それは悪くない考えだな」ローダーが言った。「兵上たちは長時間歩き続けてきたので、いささか士気が低下しておるかもしれん」
 いつものように黒い胴着とタイツを身につけた、レルドリンのいとこのトラシンが立ち上がった。「よかったら、ぼくもお供させてくれないか」若者はコロダリン王に、あつかましい笑みをむけた。「われらアストゥリア人は陰謀にはすぐれていても、戦略家には向いていないようです。わたしがこれ以上おそばにいても、会議のお役にはたてないでしょう」
 アレンディアの王は、若者の言葉に笑みを浮かべて言った。「なかなか威勢のよい若者だ。しかしそなたが口で言うほど、アレンディアの王冠の強力な敵であるとは、信じがたいのだがな」
 トラシンは笑みを浮かべたまま大げさにお辞儀をした。そして天幕を出るとすぐにレルドリンの方を向いていった。「あの、汝だの、ぼくだってそれらしい馬鹿ていねいな言葉使いを覚えたんだがな」
「慣れてしまえば、それほど厄介なものでもないさ」レルドリンが答えた。

2016年8月18日 (木)

を再び連れ帰ること

「あの一段高い石の上から話しかければいいわ。あの場所は今でこそ日陰になっているけれど、太陽は動き続けているから、ちょうどあなたが演説を終わる頃いっぱいにさしこむようになるで腦部發展しょう。素晴らしい仕上げになること間違いなしよ」
 空を見上げたセ?ネドラは、太陽がそこへ行くまでにどれほどの時間がかかるかを思って愕然とした。「わたし、気分が悪くなりそうだわ」彼女は震え声でささやいた。
「それは後にしましょうね。とにかく今は時間がないわ」女魔術師はレルドリンの方を向いた。
「さあ、そろそろ王妃を紹介してもいいわ」
 レルドリンは崩れた壁の上に飛び乗ると、手をあげて観衆を黙らせた。「わが同胞よ」かれは大きな声で呼びかけた。「前回の〈エラスタイド〉で、われわれは世界を根底から揺るがすようなできごとに遭遇した。それこそはわれわれが千年以上にもわたって待ち続けていた瞬間だった。諸君、リヴァの王が帰還したのだ!」
 観衆はいっせいに身動きし、興奮したようなざわめきがさざ波のように広がった。
 何ごとにおいても大げさなレルドリンは、いまや熱にうかされたようにしゃべっていた。若者は炎を吐く剣がガリオンの真の身分を明かしたときのようすや、アローンの王たちによるリヴァ王への忠節の誓いのさ腦部發展まなどを次から次へとまくしたてた。だが不安のあまり気も遠くなりそうなセ?ネドラの耳には何も聞こえなかった。彼女は心のなかで必死に演説を復唱しようとしたが、もはやそれはごちゃまぜになって元の形をとどめてはいなかった。ほとんどパニック状態におちいりかけた彼女の耳に若者の言葉が飛び込んできた。「諸君、ここで帝国の王女セ?ネドラ殿をご紹介する。彼女こそはリヴァの女王その人だ!」
 体中をがたがた震わせながらセ?ネドラは崩れた壁の上に登り、彼女の前に並んだ顔を見わたした。用意周到な下準備も、入念に稽古してきたせりふも皆きれいさっぱり頭から抜け落ちていた。王女は体をわななかせ、何から切り出せばよいかもわからず、蒼白な顔をして立ちすくむばかりだった。しんとした沈黙は耐えがたいほど恐ろしかった。
 たまたま最前列の観衆のなかに、前夜飲みすぎたか、その朝はかくべつに機嫌の悪かった一人のアストゥリアの若者がいた。「おいおい、どうやら女王さまはすっかり演説を忘れちまったらしいぜ」かれはクスクス笑いながらわざと大きな声で友人に話しか腦部發展けた。
 セ?ネドラの反応はすばやかった。「どうやらそこにおられる殿方もすっかり礼儀を忘れておしまいになったようね」彼女はかっとなって答えた。青年の不作法がセ?ネドラの怒りに火をつけた。
「こんなもの聞く気も起こらんね」ほろ酔いかげんの青年はわざとうんざりしたような声で言った。「だいたい時間のむださ。ぼくはリヴァ人じゃないし、みんなだってそうだ。よその国の女王が何を言おうがアストゥリアの愛国者となんの関係があるというんだ」
「アストゥリアの愛国者は、世界がこの森だけではないことを忘れてしまうほど頭がワイン漬けになってしまったのかしら」セ?ネドラはむきになってやり返した。「それとも何が起こってるかわからないほど無学なのかしら」彼女は青年に向かって威嚇するように指を突きつけた。
「聞いてちょうだい。愛国者のみなさん」王女の美しい声が響きわたった。「あなた方はわたしがここで気のきいた演説でもぶつのかと思ってらっしゃるかもしれないけれど、わたしはかつてない重要なことを皆さんにお伝えするために来たのです。わたしの話を聞くのも背を向けるのもあなたたちの自由です。でもそのような人たちは、今より一年後にアストゥリアという国が消え去り、あなた方の家々はくすぶる廃墟と化し、グロリムたちが炎と血まみれのナイフとで愛する家族をトラクの墓へといけにえに狩りたてるときになって初めてこの日を振り返り、わたしの話を聞かなかったことを心から後悔することになるでしょう」
 あたかも一人の不作法な青年への怒りが、心の堰を突き破らせたかのように、セ?ネドラの唇からあふれ出した。彼女はきわめて率直に話した。それは入念に考え抜かれたせりふなどではない、心の底からほとばしる言葉だった。しゃべるに従って彼女はしだいに興奮してきた。王女はかれらに訴えかけ、なだめすかし、最後に命令した。何を言ったかはまったく覚えていなくても、そのときのわくわくするような高揚感を一生忘れることはないだろうと彼女は思った。これまで感情の暴発やかんしゃくとなって少女時代をいろどってきた覇気や情熱が今や渾然一体となって彼女をつき動かしていた。王女はすっかりわれを忘れ、自分の趣旨に対する盲目的な信念だけで熱に浮かされたようにしゃべっていた。
 突然、太陽の光がセ?ネドラの上に降りそそぎ、彼女の鎧を燦然と輝かせ、髪の毛を炎のように燃え立たせた。「〈西の大君主〉、リヴァ王ベルガリオンより共に戦おうとの仰せです!」彼女は宣言するように叫んだ。「そして今、王妃たるわたしセ?ネドラはリヴァの生ける旗印としてここにまいりました。ベルガリオン王の呼び掛けに馳せ参じる勇士はどなたかしら。われと思わん者は、わたしの後についてきなさい!」
 真っ先に剣を掲げたのは最初に彼女を笑った青年だった。かれは剣で敬礼の姿勢をとると、大声で呼ばわった。「わたしは従います!」それを合図にしたかのように五十本の敬礼と誓いの剣がいっせいに上がり、太陽の光を受けてきらめいた。同時に五十の声がいっせいに轟いた。
「わたしは従います!」
 セ?ネドラは剣を握った手をさっと天に差しあげた。「では、わたしについていらっしゃい!」彼女は歌うように言った。「わたしたちはこれから呪うべきアンガラクの大軍と対決に向かうのです。さあ、わたしたちの進軍で全世界を震えあがらせてやろうではありませんか!」かっきり三歩で彼女は愛馬の鞍に飛び乗った。そして躍りあがる馬の向きを変えると廃墟から全速力で走り去った。剣を握った一方の手は高く差しあげられ、燃え立つような髪が風になびいた。アウトゥリア人の若者たちは一丸となって彼女の後を追いかけてきた。
 森のなかに入ってから王女は一度だけ後ろを振り返り、勇ましくも愚かな青年たちの熱に浮かされたような顔を見やった。彼女はついにやってのけたのだ。果たして戦争が終わったときこれらの無分別な青年のうち何人ができるだろう。いったいこの中の何人が東の荒野で命を落とすのだろうか。突然目に浮かんだ涙を即座に振りはらい、リヴァの女王は走り続けた。彼女の軍隊に合流させるアストゥリアの若者たちを背後に従えながら。

2016年7月27日 (水)

いるはずはなかった

 子供は身をくねらせてガリオンの腕の中から抜け出すと、転がる〈珠〉を追いかけた。「使命《しめい》」彼は〈珠〉をつかむと、うれしそうに笑い声をあげた。
「何があったんだ?」シルクはよろよろと立ち上がり、頭を振った。
「クトゥーチクが自らを滅ぼ乳鐵蛋白したのよ」ポルおばさんも立ち上がりながら答えた。「かれは〈珠〉を消そうとしたの。〈神々の母〉が抹消をけっしてお許しにならないということも忘れて」彼女はすぐにガリオンを見て、「おじいさんを起こすのを手伝ってちょうだい」と言った。
 ベルガラスは、クトゥーチクを崩壊した爆発が起こったとき、そのほぼ真ん中に立っていた。爆風で部屋の端まで飛ばされたかれは、髪とひげの先を焦がし、死んだような目をして塊のように茫然と横たわっていた。
「起きて、おとうさん」ポルおばさんはかれの上に屈み込むと、急き立てるように言った。
 と、そのとき、塔がぐらぐらと揺れはじめ、それを支えている玄武岩の高峰が震えた。そして、大地の底からドカーンという巨大な音が響いてきた。クトゥーチクの破壊の余震で大地が揺れると同時に、部屋の壁から石やモルタルの破片が雨のように降ってきた。
 階下の部屋で重々しいドアがバンと開く音がしたかと免疫系統思うと、ドシンドシンという足音が聞こえてきた。「どこだ?」バラクの声が鳴り響いた。
「上だ」シルクは階段の下に向かって叫んだ。
 バラクとマンドラレンが石の階段を駆け上がってきた。「早く出るんだ!」バラクが吠え声をあげた。「塔が岩から離れるぞ。もう上の寺院も壊れはじめてる。塔が岩にくっついているあたりの天井に、幅が二フィートもありそうな大きな裂け目が入ってるぞ」
「おとうさん!」ポルおばさんは叫んだ。「起きなきゃだめよ!」
 ベルガラスは放心したように彼女を見つめた。
「抱き上げてちょうだい」彼女はバラクに言った。
 峰の側面と小塔をつないでいた岩が、激動する大地の圧力に耐えかねて、突然バリバリという大音響とともにはがれはじめた。
「あっちだ!」レルグの声が響きわたった。かれはすでに石が割れて粉々に砕けはじめている塔の後ろの壁を指差していた。「あれを開けられないか? あの後ろ更年期中醫に洞穴がある」
 ポルおばさんはサッと視線を上げると、その壁をじっと見つめて指の先を向け、「砕け散れ!」と唱えた。暴風を受けた麦わらの壁のように、石の壁は反響する洞穴の中に吹き飛んだ。
「ああっ、離れる!」シルクが甲高い悲鳴をあげた。かれの指先は、どんどん大きくなっていく、峰の固い岩肌と塔の間の裂け目を指していた。
「飛ぶんだ!」バラクが叫んだ。「急げ!」
 シルクは裂け目を飛び越すとすぐに振り向き、かれを手探りで追ってきたレルグを受け止めた。ダーニクとマンドラレンはポルおばさんを真ん中に挟み、ギーギーと音をあげてますます大きくなっていく裂け目を飛び越した。「行くぞ、坊主!」バラクはガリオンに言った。チェレクの大男は、まだ眩惑状態にあるベルガラスを抱え、岩の穴に向かってドシンドシンと歩いていく。
(子供だ)ガリオンの心の中で声が叫んだ。それはもういつもの冷淡で無関心な声ではなかった。(子供を救え。さもないと今まで起こったことはすべて水の泡になるぞ!)
 ガリオンは子供を忘れていたことに気づいて、あっと息をのんだ。かれは振り返ると、ゆっくりと倒れていく塔の中へ急いで引き返した。子供を腕の中に抱えると、かれはポルおばさんが吹き飛ばした岩の穴に向かって走った。
 裂け目を飛んだバラクの足が、対岸の縁ぎりぎりのところで一瞬ぐらついた。必死に走っていたガリオンは、その状態で力を呼び集めた。そして自分がジャンプする瞬間、あらんかぎりの意志を押し出した。腕に子供を抱えたまま、かれは恐ろしい裂け目を文字通り飛び越え、バラクの大きな背中にもろに激突した。
〈アルダーの珠〉を大事そうに抱えた子供は、ガリオンの腕の中でかれを見上げると、「使命《しめい》?」と聞いた。
 ガリオンは後ろを振り返った。塔はすでに玄武岩の壁から大きく離れ、基礎の石が砕けて険しい岩肌からはがれていくところだった。間もなく、塔は重々しいほどにゆっくりと向こう側にひっくり返った。折りしも、トラクの寺院の残骸が猛烈な勢いで降り始め、塔は砕けた石の雨を受けながら峰の壁を離れ、恐ろしい淵の底に落ちていった。
 大地が震え、衝撃に次ぐ衝撃が玄武岩の峰の中に反響すると、かれらの入り込んだ洞穴の床も大きく波打った。ラク?クトルの防壁の巨大な塊がいくつもはがれ、今しがた昇ったばかりの太陽に赤く照らされながら、洞穴の入り口すれすれのところを落ちていった。
「皆いるか?」シルクは素早くあたりを見回して言った。そして、皆が無事だったことを知って安心すると、「入り口からもう少し下がったほうがいい。峰のこの辺りはあまり頑丈そうじゃないからな」と付け加えた。
「すぐに下りますか?」レルグはポルおばさんに訊ねた。「それとも、揺れがおさまるまで待ちますか?」
「もう行ったほうがいいですよ」バラクがすかさず提言した。「揺れがおさまれば、マーゴ人がこの洞穴にどっと押し寄せてきますよ」
 ポルおばさんは半分失神状態にあるベルガラスを心配そうに見やった。が、やがて勇気を揮い起こしたのか、きっぱりとした口調で「下りましょう」と言った。「でも、途中あの奴隷の女のひとを拾うことを忘れないでね」
「今頃はもう死んでますよ」レルグはすぐに断言した。「この地震じゃ、あの洞穴の天井だってきっと落ちてるはずだ」
 ポルおばさんは氷のように冷たい目でかれの顔を見すえた。
 彼女のその視線にそれほど長く耐えられる人間が。レルグは目を伏せると、不機嫌な声で、「わかりました」と言った。それからきびすを返すと、皆を率いて暗い洞穴の中に入っていった。その間にも、地震はかれらの足元を揺るがしていた。

2016年7月13日 (水)

ど耐えきれないほどに

 色づいた木の葉が風に吹かれて赤や金の雪のように舞い落ち、冷えこむ夕方のあかね色の空に出た冷たい一番星に向かってファルドー農園の煙突から青い煙がまっすぐたちのぼ母乳餵哺っていくその年の秋のなかば、ウルフが戻ってきた。かれは突風の吹くある午後、道をやってきた。秋の空は低くたれこめ、真新しい落葉が老人のまわりで渦まいて、ぶかぶかの黒いマントが風にはためいた。
 台所の残飯を豚にやっていたガリオンは老人がやってくるのを見て、出迎えに走った。老人は旅の埃をかぶって疲れているように見えた。灰色の頭巾の下の顔は厳しかった。いつもの楽天的で陽気な態度はどこへやら、ガリオンがそんなに沈痛なようすの老人を見たのはそれがはじめてだった。
「ガリオン、大きくなったな」ウルフは挨拶がてら言った。
「五年もたつんだもの」
「もうそんなになるか?」
 ガリオンはうなずくと、友だちと肩を並べた。
「みんな元気かね?」ウルフはたずねた。
「うん。ここじゃみんな変わらない――変わったのはブレルドが結婚して引越したのと、去年の夏年とった牝牛が死んだことだけさ」
「その牝牛ならおぼえとるよ」と言ってからウルフはつけ加えた。「ポルおばさんと話をしなけりゃならん」
「きょうのおばさんご機嫌ななめなんだ」ガリオンは警告した。「納屋で休ん嬰兒敏感だほうがいいかもしれないよ。食べ物と飲み物はぼくがすぐにくすねてきてあげる」
「おばさんのご機嫌を思いきって試すしかあるまい」とウルフは言った。「急ぎの用件なのだ」
 かれらは門をくぐり、中庭を横ぎって台所の勝手口に近づいた。
 ポルおばさんが待っていた。「またきたの?」おばさんは腰に手をあてて辛辣に言った。
「わたしの台所はあんたのこのあいだの訪問からまだ立ち直っていないのよ」
「マダム?ポル」ウルフは一礼してから妙なことをした。胸の前で宙に複雑なしるしを小さく描いたのである。ガリオンにその身ぶりを見せるつもりがなかったのは確実だった。
 ポルおばさんの目がわずかに大きくなったかと思うと、次の瞬間に細められ、顔つきが険しくなった。「どうして――」と言いかけておばさんは口をつぐみ、鋭く命じた。「ガリオン、人参が少しいるのよ。菜園の向こうはしの地面にまだ何本か残っているわ。すき[#「すき」に傍点]とバケツを持って取ってきてちょうだい」
「でも――」いったんは逆らったものの、おばさんの顔つきに恐れをなしてガリオンはあわてて外に出た。むろん盗み聞きはほめられた癖ではなかったし、センダリアではもっともぶしつけなことと考えられていたが、ガリオンは追い払われるときにかぎって話がとびきりおもしろく、自分と少なからぬ関連があるという結論にずっと前に達していた。良心がとがめた時期も過去にちょっとあったが、それを実行し中風治療てもなんら害がない――聞いたことをくり返さないかぎり――ことがわかると、良心は好奇心に負けてしまっていた。
 ガリオンはすばらしく良い耳を持っていたが、台所の物音の中から二つの聞き慣れた声を拾いわけるにはちょっと手間取った。
「あの男が手掛かりを残すわけがないわ」ポルおばさんが言っていた。
「残す必要はない」ウルフが答えた。「あれそのものが臭跡を残してくれる。それをたどるのなど朝めし前だ。キツネがウサギの足跡をかぎわけるようなものさ」
「あの男、それをどこへ持っていく気かしら?」
「さてね。やつの心はわしには読めん。たぶん北回りでボクトールへ行くだろう。ガール?オグ?ナドラクへはそれが一番の近道だから。わしに追われていることがわかれば、できるだけ早くアンガラク人の国へはいりたがるはずだ。西部にいるかぎり、やつの盗みは完了しない」
「それが起きたのはいつ?」
「四週間前だ」
「もうアンガラクの王国に着いている可能性もあるわね」
「それはありそうにない。ちょっとやそっとの距離ではないのだ。しかし、アンガラクにまだついていないならわしはやつを追跡せねばならん。おまえの助けがいる」
「でもどうしてわたしがここを出られて?」
 ポルおばさんが訊いた。「あの子を守らなくてはならないのよ」
 ガリオンの好奇心はほとん高まっていた。かれは勝手口にさらににじりよった。
「あの子はここにいれば安全だ」ウルフが言った。「これは一刻を争う問題なのだ」
「いいえ」ポルおばさんが反論した。「ここだって安全じゃないわ。この前の〈エラスタイド〉には、マーゴ人がひとりとタール人が五人やってきたのよ。マーゴ人は商人をよそおっていたけど、それにしては質問が多すぎたわ――数年前にアッパー?グラルトで見たという老人とランドリグという名の子供のことをたずねたのよ。わたしにも気づいたかもしれないわ」

2016年6月22日 (水)

美しいとして僕はあ

『そして僕は気付きました。生体“気”の流れを強制的に変えてはならないということを最近気付きました。10円玉や1円玉で、生体“気”の流れを強制的に変えるという方法がSCOTT 咖啡機ありますが僕はそれを最近自分の体で実験してそしてそれは良くないことだということに気付きました。1円玉だけだったら生体の邪気というか生体表面の微弱電流を放出するのに良い面もあります。でも銅は駄目です。金や銀なら良いのかもしれません』

『生体電流。微弱電流。鍼ならば良いのです。でも10円玉は何故か良くない』

『10円玉は大きすぎるからかもしれません。MP針のように小さなものだったら良いようです』

 誰も聞いてなかった。僕は一人で喋って推拿いた。一人っきりだった。薄暗い空間の中、音楽の音が喧しいほどに鳴り渡っていた。

『自分もその病気に苦しんでいます。僕の友も、名前は思い出せませんが僕の友も苦しんでいます。救わなければ、救わなければ』

『新しい治療法。新しい経穴。それを探求しながらも探求できないでいます。病気とは、慢性化した病気は治らないものだと最近は諦めに似た思いに捕らわRF射頻れることが良くあります』

 いつの間にか桃子さんが僕の前に来ていた。僕の一人語りを聞いていたのだろうか? しかし、僕はいつもボソボソとしか喋らないので聞こえなかったと思う。変わってなかった。桃子さんは以前より若くなって美しくなっているように思った。とても30代には見えなかった。20歳の半ばぐらいにしか見えなかった。

 今が、今が、一番美しいようにも思った。中学生の頃、小学生の頃、高校生の頃、美しかった。でも、今は成熟した美しさというものなのだろうか、美しい。

『もう12年、いえ、20年前のことになるのかもしれません。僕が小学5年生の頃か6年生の頃か、それとも中学1年生の頃のことか、はっきりと思い出せません。夏、網場プールで見た膨らんだ胸のあなたの美しさは今でも昨日のことのように思い出せます。美しかった、とても美しかった。僕の学年には居ないとてもなたを僕の指の3番目か2番目かに位置したのでした。あなたはあのときどこかを見ているふりをしていました。僕のすぐ側であなたは僕から話しかけられるのを待っていました。でも僕は喋ったら嫌われるという悲しい病気を持っていました。それで僕は悲しく再び水の中に潜って行ったのです』

2016年3月 2日 (水)

なりの知識はあ

「カレロスのあの家でベリナ様が出会ったものは、何だかわかりませんが、きわめて邪悪なものでした。あの方はすっかり取り憑かれてしまったのです。ベリナ様は奴隷にした召使たちを夜な夜なあたりの村に送り出し、罪もない農奴をさらってこさせました。あとでわかったのですが、あの方は屋敷の地下に拷問部屋を作っていました。そこで血と苦痛の喜びにひたっていたのです」オ周海媚?膠原抗老槍キュダの顔が嫌悪に歪んだ。「人間の肉を喰《く》らい、裸の全身に人間の血を塗りたくって。わたしがこの目で目撃したのです」息をつき、気を落ち着けて先を続ける。「伯爵が戻っていらしたのは一週間ほど前のことです。ある夜、遅くお帰りになった伯爵が、地下室からワインを取ってくるようにとおっしゃいました。普段はたいてい水しかお飲みにならない方なのですが。地下室に下りていくと、悲鳴のようなものが聞こえました。そのあとを追って、わたしは隠し部屋の扉を開けたのです。神よ、開けなければよかった!」オキュダは両手で顔を覆った。すすり泣きの声が洩《も》れ聞こえてくる。やがて多少とも自制を取り戻すと、召使は話しつづけた。「ベリナ様は裸で、農奴の娘がテーブルに鎖で縛りつけられていました。あの方は憐れな娘を、生きたまま切り刻んでいたのです。そしてひくひくと動く肉片を口に運んでいました!」オキュダは嘔吐しそうになり、歯を食いしばった。
「そこにいたのはベリナだけだったのか」なぜそんなことを尋ねる気になったのか、スパーホークは自分でもよくわからなかった。
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「いえ、奴隷となった召使たちもいっしょにいて、床に流れた血をすすっていました。それに――」と言いよどむ。
「続けて」
「これはあまり確かなことではありません。頭がくらくらしていましたから。ですが部屋の奥のほうに、フードで顔を隠した黒ずくめの人影を見たような気がします。その姿を見ると、魂が凍りつくようでした」
「その人影のこと、もう少し詳しくわからないか」
「背が高く、とても痩《や》せていて、黒いローブにすっぽりくるまっていました」
「ほかには」次に何が来るのか、スパーホークには背筋の凍りつくような確信があった。
「部屋が暗かったのです、騎士様」オキュ周海媚 瑪沙美容療程ダは弁解するように言った。「あの方が焼きごてを熱していた炎しか明かりがなくて。ですがその人影があるように思えた隅には、緑色の光が見えたような気がします。何か重要なことなのでしょうか」
「おそらくな」スパーホークは言葉少なに答えた。「続けてくれ」
「わたしは伯爵に知らせに走りました。最初は信じていただけませんでしたが、無理に地下室へとお連れしました。その場のありさまをご覧になったら、伯爵が妹御を殺そうとなさるのではないかと思いました。そうしていればよかったのです! 戸口に伯爵の姿を見たあの方は、農奴の娘に使っていたナイフをかざして襲いかかってきました。ナイフはわたしが奪い取りましたが」
「それで伯爵は、ベリナを塔に閉じこめたわけか」スパーホークは話の凄惨さに身震いしていた。
「わたしがお勧めしたのです」オキュダはぼそぼそと先を続けた。「わたしのいた施設では、暴力的な患者は監禁していましたから。二人で塔まで引きずっていって、ドアに鎖をかけました。何とか治療する手だてが見つからない限り、ベリナ様は生涯をあの部屋で過ごすことになるでしょう」
「ほかの召使たちはどうした」
「最初はあの方を解放しようとしたので、何人かわたしが手にかけました。そして昨日のことですが、残った者たちがあの愚かな吟遊詩人に作り話を吹きこんでいるのを、伯爵が耳になさいました。そこで伯爵は全員を城から追い出すよう、わたしにお命じになったのです。しばらくは門のあたりをうろうろしていたようですが、そのうちにみんないなくなりました」
「その者たちにおかしなところはなかったか」
「みんな魂の抜けたような無表情な顔をして、わたしが手にかけた者たちは、殺されても声も上げませんでした」
「それを恐れていたんだ。前にも同じような者たちと出会っているのでね」
「あの家で、ベリナ様の身に何があったのでしょう。何があの方を狂気に追いやったのでしょう」
「修道僧だったからには、神学についてそれるはずだな。アザシュという名を聞いたことはあるか」
「ゼモック人の信仰する神ですか」
「そうだ。あの家にいたスティリクム人は実は周海媚?膠原抗老槍ゼモック人で、レディ?ベリナの魂はアザシュに奪われてしまったのだ。ベリナが塔から抜け出せるということはないか」
「絶対に不可能です」

2016年2月26日 (金)

ン店が世界に進

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『うどん』も世界に出ているようだ。
あの味覚が世界に受け入中醫失眠れられるのか、かなり疑問だが
驚くなかれロシアなどにも着々と進んでいるという。

うどんは、もともと中国を発祥の地としていることは間違いないが、
そのうどんが、奈良時代には、もうすでに日本に伝わっていたと言われたり、
西暦800年頃に弘法大師がもたらしたとか、
はたまた、仁治2年すなわち1241年に中国から帰国した僧
円爾(聖一国師)が製粉の技術を持ち帰って、饂飩(うどん)・蕎麦(そば)・饅頭(まんじゅう)を
広めたとか言わHKUE 呃人れている。
どの説が正解なのかは、現代人が議論しても始まらない。

うどんは中国の魏の時代に誕生し、形がはっきりしないところから、
その名を”混飩(こんとん)”と呼んだりしたという話がある。
そして、その混飩も時代を経て、唐の時代には切り麺になったらしい。
日本では、鎌倉時代は、禅寺で食べられたりしたそうだが、
現在のような果酸煥膚長い麺になったのは室町時代。
形を少しずつ変えながら現在に至っているようだ。

うどんの中でも、麺がシコシコの讃岐うどんが人気だと言われ、
その人気を逃すまいとしたのか、
『香川県は、”うどん県”に改名しました』という宣伝をして、
ホームページもそのような名称で出てくる。
香川県出身のタレントを起用し、大いに売り出した格好だ。
その投資以上の経済効果はあったようだ。

それに力を得たのか讃岐うどんの業者が世界に出ているという。
さてその世界への道は、どうなるのか?
今は、まだ”混沌”といったところのようだ。

2016年2月16日 (火)

ドラマには

20150508204009_nmefz   
決まったパターンの類型を見ることができる。
その展開のパターンは、
『出会い→希望→試練→予期せぬ敗北→天の声
→鍛錬→勝利→よろこび→そして、旅立ち』
のような形をとる。

「スターウォーズ」「ロッキー」をはじめ、
アドベンチャーや勝利をもたらす映画とくれば、
決まって、このような展開になっている。

この康泰領隊類型、
どうもドラマに限ったことではなさそうだ。
我々の日常の世界も、
このような類型の中にあると言っても過言ではない。

あまり日本人には馴染みはないが、
新プラトン派のギリシャのプルタルコスは、
帝政ローマ時代の人で、
著書に『対比列伝』(英雄伝)などで知られている。
ちょっと読んで回收公司みると、
ギリシャの密儀に初めて加わる人の試練に
ついて述べているくだりがある。
それが、この類型にかなり似通っている。

「まず、密儀を受ける儀式として、
『毒杯か剣か』といった、死に至るかも知れないような
苦しい試練を与えられる。
極限状態に陥る。
指導者との心の触れ合い。
そして、克服。
新しい仲間として認められ、喜び合う」というもの。

目を転じて、今日のニュースでは、
「法務大臣、辞任濃厚」と出ていた。
あれだけ暴露記事が出ると致し方ないという感じだ。
そう言康泰旅遊えば、
勝利ならずや敗北の類型というのもある。
上記の半分のパターン。
『出会い→希望→試練→予期せぬ敗北→そのまま敗退』
というのが、ソレ。
この大臣の歩み、典型的な敗北パターン。

ドラマには

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決まったパターンの類型を見ることができる。
その展開のパターンは、
『出会い→希望→試練→予期せぬ敗北→天の声
→鍛錬→勝利→よろこび→そして、旅立ち』
のような形をとる。

「スターウォーズ」「ロッキー」をはじめ、
アドベンチャーや勝利をもたらす映画とくれば、
決まって、このような展開になっている。

この類型、
どうもドラマに限ったことではなさそうだ。
我々の日常の世界も、
このような類型の中にあると言っても過言ではない。

あまり日本人には馴染みはないが、
新プラトン派のギリシャのプルタルコスは、
帝政ローマ時代の人で、
著書に『対比列伝』(英雄伝)などで知られている。
ちょっと読んでみると、
ギリシャの密儀に初めて加わる人の試練に
ついて述べているくだりがある。
それが、この類型にかなり似通っている。

「まず、密儀を受ける儀式として、
『毒杯か剣か』といった、死に至るかも知れないような
苦しい試練を与えられる。
極限状態に陥る。
指導者との心の触れ合い。
そして、克服。
新しい仲間として認められ、喜び合う」というもの。

目を転じて、今日のニュースでは、
「法務大臣、辞任濃厚」と出ていた。
あれだけ暴露記事が出ると致し方ないという感じだ。
そう言えば、
勝利ならずや敗北の類型というのもある。
上記の半分のパターン。
『出会い→希望→試練→予期せぬ敗北→そのまま敗退』
というのが、ソレ。
この大臣の歩み、典型的な敗北パターン。

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